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それはまるで十字架を象った墓標だった

それを軽々と持ち、標的に投げる

まるで怪物だ

奴は木々を薙ぎ倒し、目的遂行へと駆ける

背後では今まさに砕けた木々が再生を始めている

此処では何もかもが再生と破滅を繰り返している

 

「―――――――――」

 

無言の闘争

巨大な爪を振りかざして、見据える先は虚空

否、漆黒の闇に紛れてはいるが、確かに其処には何かが居た

 

䨩(れい)天は星に、星は闇へ。夜宵に集うは光の煌き、」

 

術式言語を紡ぐ

だがそんな言葉を述べても怪物の快進撃は止まらない

その体躯はあまりにも巨大で、その瞳は何も映してはいない

ただの黒であり、機械の様に動いている

奴は白槌と云う

時空間航行者にして超A級判定の破壊者

降り立った先で空間を歪曲し、再生と破滅の永久螺旋を造り出す

メビウスの輪にはまったのが、今戦場と化している鶴ヶ谷市

白槌は何故か此処に留まり、終わる事の知れないループを繰り返している

彼の者が何者なのかは些細な事だ

必要とされるのは戦う意思だけである

 

「天は雷鎚。集え、全てを射抜く剣となれ。―――鬼塵剣・聖印(セイクリッド・エリュシオン)」

 

単語は言葉となり、言葉は文字となる

術式が完成し、白槌に迫るは鈍く輝く黒耀色の巨刀

白槌はそれをまともに受けた

吹き飛ぶ左腕

それでもまだ戦闘意欲は衰えないのか、こちらに迫って来る

両者の距離は三メートル弱

男はその異変に気付いた

 

 

第弐動目に続く

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