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「――――――」

 

白槌が弐動目に入った

こちらに迫るその小柄な少女

瞳孔が開く。まるで獲物を狙う野獣の様だ

指先を下に向けた状態で腕を突き出してくる

それは掌底であり、詰まる所繋ぎ手でもある

次に繋げようというのか・・・

だがそれしきの直線的な攻撃など避けてしまえば如何という事はない

だがそれをさせなかった要因がある

 

「・・・づっ!?」

 

先程の踵落としで受けた傷が疼く

再生が間に合わなかったのか、それとも阻害する何かしらの力が働いたのか

そんな事は今は如何でも良かった

ただ白槌の掌底がその隙を逃さぬかの様に、再び水月に突き刺さったのだ

矢継ぎ早に次の攻撃が来る

勢いを殺さず続いて裏拳が右胸に中る

肺を強打された事により呼吸が数瞬止まる

それを見た上で白槌は渾身の一撃を放つ

全力の中段蹴り。それは皮肉にも俺の最も得意とする技だった

迫る直前、二人の間に一つの影が割り込む

白とも銀ともとれる頭髪に黄土色の瞳

ソイツは間違い様も無い俺の双子の弟だった

 

「・・・・・・赤、か」

 

赤「珍しく苦戦しているな、蒼麻。やっぱり少女相手じゃ無理か?」

 

蒼麻「ぬかせ・・・」

 

蒼麻「(お前もよく女性を殴る事は出来ないとか言ってるじゃねーか)」

 

赤と呼ばれた男は割り込むだけではなく、白槌の繰り出した右足を容易く掴んでいる

そういう意味での身体能力は高いと云える

しかしこれは人ならざる者の戦い

如何に基礎能力が高かろうと通じないだろう

・・・彼が人で終わっていたらの話だが

掴んだ足を放る

それだけで白槌は元の距離まで戻される

赤は白槌を見据えファイティングポーズをとる

そう、彼の得意とする戦法は拳と拳の鍔迫り合いなのだ

故に彼に拳で勝てる者はまず居ない事になる

 

「二人とも、様子が変だよ」

 

秋が言う

確かに様子が変だ

如何、という事でもないが動きが止まった

こちらを伺っているといった風でもない

時間が止まったみたいに止まった

不思議に思っていると不意に口を開き

 

白槌「―――見つけた」

 

そう言って

“また”瞳孔が開いた

 

 

第肆動目に続く

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