top of page

視線の先には何処で聞いて来たのか弥生が立っていた

戦場に非戦闘者が居る事は何よりもあってはならない事だ

人質

略奪

だが白槌がしたのはそのどちらでもなく・・・

 

弥生「蒼麻様!その子はわたくしの・・・」

 

白槌「  」

 

弥生「・・・っ?」

 

蒼麻「弥生!!」

 

・・・殺す事だった

俺は走る。傷なんて構いやしない

一刻も早く、誰よりも早く俺は弥生の元に駆け寄りたかった

だって、だって、・・・・・・弥生の腹部からは赤い血液が滴り落ちていたから

その行動を制する者がいた

細い腕を目一杯広げてこちらを向いて

傷なんてお構い無しにこちらを向いて

弥生はこちらを向いていた

 

蒼麻「弥生、何でだよ?!」

 

弥生「蒼麻様、この子はわたくしの娘なんです!」

 

その瞬間、蒼麻に電撃が走った!

目は点になって口はあんぐり開いたまま

赤も驚いている様で言葉を失っている

残る秋はというと欠伸をしていた

 

蒼麻「な、なななな、何だってー!?」

 

蒼麻「(え、ちょ、うわ、如何いう事だよそれ!?これはまさかドッキリ、ドッキリなのか?!)」

 

弥生「わたくしが造られた者なのは知っていますよね?」

 

蒼麻「ふ゛えあ!?・・・あ、ああ」

 

鶴ヶ谷の人間は全員が羊水炉から生み落とされた複製体

元になった人間が存在し、稀にその素体の記憶をも受け継ぐ素体返りが生まれる事がある

弥生は俺達が訪れた時に出会った鶴ヶ谷での最初の素体返りだった

しかし彼女の場合、素体返りではあるが記憶を失っているらしく、何も覚えていなかった

生まれてからの事は知っているがその前の事を覚えていない

それが彼女の唯一の特異性だった

 

弥生「この子はわたくしのオリジナルから生まれた存在。れっきとしたわたくしの娘なんです!」

 

秋「蒼麻、分かってるつもりだよ。素体返りである還り女はオリジナルと同一存在。思考や口調、在り方が違ったとしても扱いは同じだ」

 

そう、オリジナルと素体返りは全てが違っていても組織構造は同じ

身体の細かい所まで違いは無いし、DNAも一致する

蒼麻にも夜剣という片割れが居る

二人は同じ素体から生まれ別々の人生を歩んでいる

実際二体の素体返りが生まれる事こそ稀である

素体返りのクローンが生まれる事もあり得るだろう

しかしそれはかなりの確立で稀有な事である

 

蒼麻「む、まぁ赤だってそうだもんな」

 

赤「オレの場合は少し違うな。頼子との間に出来た子供はオレの素体だった男の娘だ、つまり転生体になる」

 

蒼麻「ん、違ったのか?」

 

赤「ああ、違う」

 

 

第伍動目に続く

bottom of page