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説明をしている間にも弥生は血を流し続けてはいたが、今はもう止まり地面に血溜まりを残しているだけだった

もう心配しなくてもいいだろう

だが流れた量を考えるとそんな事も言っていられない

早急な対応が必要な状況である

白槌は話が終わるまで静かに待っていた

その忠犬ぶり、恐れ入る

敵でなかったら頭を撫でてやるところである

そりゃもう、髪がいらん事になるまで

 

白槌「だがそんな事は関係無い。私はお前を殺さなければいけない」

 

前言撤回

やっぱコイツは敵、如何仕様も無い位の怨敵

その言葉に弥生は口を開く

 

弥生「それは何故?」

 

白槌「私は在ってはならない存在、疎まれし存在。私がお前から生まれたのなら、私は私を消す為にお前を殺す」

 

弥生はその言葉に表情を変え、白槌を優しく包み込む

白槌はそれを受け入れる

所詮は死に行く者、流血は止まってしまったが結果的に死亡者にすればいいのだ

 

弥生「自分が要らないなんて思わないで。この世に要らない人なんて居ないのよ」

 

白槌「私は人ではない、人の皮を被った怪物だ。お前も怪物などを受け入れはしないだろう?」

 

弥生「何を言っているの。自分の子供を怪物なんて呼ぶ訳ないでしょう?貴女はわたくしの娘・・・それでいいじゃない」

 

白槌は自分に問い掛ける

今までこんな事を言ってくれる者は居ただろうか?

論理や概観だけで判断せずにここまで接してくる者は居たか?

答えは無しだ

そんな事を言い出す者も実行する者も居なかった

ただ遠目から怯え怖がるだけだった

時には武力行使する者も少なくなかった

白槌は聞く

 

白槌「私は貴女の娘になれるだろうか?」

 

もし・・・もしも、そんな事が叶うとしたら

そんな絵空事が実現する未来があるのなら

願いたい

叶えたい

私は決して不要ではなかったと胸を張って言える様になりたい

 

弥生「大丈夫、これからゆっくりなっていけばいいの。時間に終わりなんてないんだから」

 

弥生は笑顔を浮かべて彼女の顔を見る

それはとても安らかで子守唄を唄う母親の様な顔だった

その顔を見た白槌は黙り込み、そっと離れる

何かを呟いたが、それは二人にしか聞こえない

白槌は一瞬の跳躍で元の場所に戻り機械を着込む

そして夜の闇へと消えて行った

蒼麻達は急いで弥生に駆け寄る

 

蒼麻「弥生・・・」

 

すると弥生は三人の方を向き、こう答えた

 

弥生「最後に・・・『お母さん』って言ってくれたんです」

 

目に涙を一杯溜めながら言う弥生

蒼麻はそんな彼女を優しく包み込む

何時か来るだろう

母娘が共に暮らす日が

・・・必ず

 

 

【蒼黒神社・外伝―弥生と白槌―】

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