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こんばんは、全世界80兆人の私のファン達
 

闇本「これまた飛躍したなぁ、おい」
 

わー!人の脳内に勝手に踏み込まないで下さいよぉ!!
・・・と、そんな感じで私の日常は徐々に侵略されています

 

闇本「人聞きの悪い・・・」
 

だったら人の脳内に居座ってお茶飲むなんて事止めて下さい
何処から飲んでるんですか

 

ルリ「えっと、じゃあ貴方は何者なんですか?」

 

闇本「そうだな・・・今から500年程前に闇の魔導に手を出した男が居てな」

 

ルリ「まどう?」

 

闇本「その男が人生やり直す為に闇と同化したんだがな。まあ、それが俺だ」

 

ルリは意味不明だった
魔導という物が何なのか分からないといった風だ
闇本はその事に話し終わってから気が付いた

 

闇本「あー、何だ、魔導とか今無いのか?」

 

ルリ「機導とは違うんですか?」

 

ルリの言う機導とは機械を手足の様に操る者の事で
都会では一般的に『機導者』と云われている

 

闇本「それは人工的な無機物の使役だろ。魔導っつーのは逆に超自然的な有機物・・・つまりエレメンタルとかエーデルとかの運用、精霊やら幻獣の使役が主だな」

 

ルリ「えーっと、つまり機械以外ですか?」

 

闇本「ヒト科ヒト目の死生者の取り扱いは死神の役目だから、正しくは人間と機械以外だな」

 

闇本「で、他には?」

 

ルリ「さっきの話を要約すると、貴方は本になる前は人間だったんですか」

 

闇本「いや、それは違う。正確には一人の男から人間と本に別れた、だな」

 

ルリはまたも意味不明だった
聞いた事の無い事例だったし、何より自分の持っている常識と合致しないのだ
それもその筈、500年前の物事と今現在の物事の測り方では相違が発生するのは致し方の無い事だ

 

闇本「俺の片割れは理解したのさ、己の人生を一から再スタートしたって意味が無いって事を。零から始めないと何事も歯車が合わないって事を知ったんだ」

 

本は窓から外を眺める
その気持ちは計り知れないが、何処か寂しそうに見えた

 

ルリ「その片割れの人はそれから如何なったんですか?」

 

闇本「ん?ああ、何年か経った時に共に生活する仲間が増えてな。そこからは俺が観測する必要も無い程平和に暮らしてた」

 

ルリ「へえ・・・・・・あれ、暮らしてたって事は」

 

闇本「200年程前に『人外狩り』ってのが始まってな」

 

その一言、その単語が歴史を紐解くピースの一つ
闇に沈んだ本がこの小さな街で最後に見た姿
それが次のページに繋がる四ページ目

 


第四話
「闇浮清浄の魔導者・シュレイツ」

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