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魔王の鉄槌という本があった
中世時代に刊行された魔女の鉄槌と魔女狩り
それらを手本として補足範囲を広げたのが魔王の鉄槌
それを教本代わりとして行われたのが人外狩りである
広義的な意味では魔女は人外の一種であり、人外を排する事は魔女を根絶やしにする事である
と、その時代の人間は考えた
人間というモノは自己と違うモノを徹底的に排除しないと満足しない生き物である
故にその行為による罪は一切無かった

 

ルリ「・・・・・・非道い・・・」

 

闇本「とはいっても人間も一個の生物だ。食物連鎖を生き抜く為にはそういう事もしなければいけない」

 

ルリ「っ、貴方はどっちの味方なんですか?」

 

ルリが睨む様に、質す様に訊ねる

 

闇本「どちらでもないさ。俺は闇に沈んだ本、闇その物といっても差し支えない。だから生物の範疇にはとらわれない」

 

ルリはその言葉を聞いて沈痛な表情をする
人外だというだけで迫害される。そんな時代があった
その行いをしたのが人間だと。自分の様な人間だと
その事実を知り、嫌な気持ちになっていた
そして、その話を聞いてから気になった事があった

 

ルリ「さっき話していた片割れの人達は如何なったんですか?」

 

闇本は静かに押し黙った
身じろぎ一つしないまま長い時間が経ち・・・
漸く言葉を搾り出した

 

闇本「・・・さてな。白狼と鳳凰は神の座に戻ったと聞くが、それ以外の消息は知らん」

 

如何でもいい事の様に呟いた
その一言が何処か寂し気に、虚ろ気に聞こえた
真相が露になるのは何時の事か分からない
しかしこの物語は未だに終わらずに今回で五ページ目となった

 


第五話
「昔々あった事」

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