未だ呆然としている
は?とか、え?とか言えばいいものを何も言えない
それだけ衝撃的な事実をサラリと言われたのである
ルリ「本当はですね、貴方の事は知ってたんですよ。ただ小さかった頃の祖母の記憶なので、正確な情報は皆無に等しかったんですが」
苦笑しながら言う
ルリ「貴方が去った後・・・曽祖父が亡くなった後位に次元変動が起きた様で、この世界とくっ付いちゃったらしいです」
そんな億分の一みたいな確率の事をこれまたサラッと言った
闇本「で、それとお前のソレに何の関係が・・・?」
ルリ「私赤ん坊の時に死に掛けた事があったらしくて、その時に祖母が埋め込んだらしいんです」
闇本「埋め込んだ?何をだ?」
ルリ「『種』。祖母はそう言ってました」
種?如何いう事だ?
キマイラの因子を種と呼んでいた?
種の形状をしていたという事か?
という事はつまりそれは自然に作られた物ではないという事だ
因子が埋め込まれた種
確か、何処かの世界でこれによく似た話があった様な・・・
ルリ「でも、まあ別に真相は何だっていいんですよ」
闇本「いや、今の時代が如何いう風なのかは知らんが、生きていく上で邪魔だろう?」
種族差別が無くなった訳ではないだろうし
魔王の鉄槌は流石に廃れた後だとは思うが・・・
それにルリは笑顔で言った
ルリ「最悪人外になっても大丈夫ですよ。だって私は貴方と契約をしたんですから!」
闇本「全く言葉の意味が飲み込めないんだが」
ルリ「あれ、契約って魂の結び付きも強くなるんじゃないでしたっけ?」
闇本はここまできて漸く理解した
闇本「お前、まさかそれを知っててわざと知らないフリを!?」
ルリ「魂までって事は、身も心もって意味より1ランク上ですよね~♪」
闇本「愛の告白か何かか、それは」
ルリ「こんな可愛い女の子が相手なら良いでしょ?」
闇本「五年は早い言葉だな」
ルリ「ザワッとくる言い方ですね」
ザワッと右肩と背中が蠢いた
ゾクッと背中に悪寒が走った
闇本「キマイラはやめろ、歯止めが利かなくなるから。主に殲滅戦的な意味合いで」
ルリ「いい加減観念して下さい。この先契約は何が何でも破棄とかしないつもりなんですから!」
闇本「悪夢だろ、それ」
ルリ「和やかムードで提供する良い夢を見たいんですか?」
闇本「・・・・・・その方が何百倍も悪夢だ」
長い溜め息を吐いて少女の眼を見て言った
闇本「死と隣り合わせでもいいのか?」
ルリ「キマイラって死に難いんですよ?」
闇本「楽な人生じゃないぞ?」
ルリ「貴方と一緒なら大丈夫」
闇本「まだ分からないのに言い切るのか?」
ルリ「誰かと歩む人生は楽じゃない事ばかりだけど、それは決して不幸じゃないから」
その言葉を聞いて思い出したのは
かつて自分と共に存在した死神の事
彼女も幸せでいた
人外でも普通の人生を送れるのだとあの時解った
なら、自分も
闇本「仕方無い、そこまで言うのなら「今、他の女の人の事考えてましたよね?」・・・何?」
ルリの目が睨んでくる
そうか、これが俗に言う修羅場というやつか
やはり知識だけではなく体験をしないと、経験として蓄積はされないんだな
ルリ「誰なんですか?」
闇本「昔の女だぞ?」
ルリ「女性はそれでも嫉妬しちゃうんです!」
闇本「ほお、それは初耳だ。忘れない内に記録をしておこう」
ルリ「話を逸らさないで下さい!」
こんな会話がこれから幾つも起きるのだろう
それはそれで如何かと思うが、体験無くして経験は詰めないと云うし
これもある意味では良い思い出として蓄積されるのだろう
そう思いながら空の上に居るであろう白狼に心の中で言ってやる
――――――真っ赤な真っ赤な月を懐に抱き、その黒き双眸で眺めていろ。夢を食い潰した一冊の本の・・・その人生の果てを!!
闇に沈んだ本、ここに完結。
前終話
「そして始まりの一歩」
完