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聞き覚えのある声がする

自分の目と鼻の先にヤツが居る

何時も悪夢として私の夢の中に現れる化物

この手で殺してやりたいと何度思ったか

血液が沸騰する様な感覚

目は血走り、銃を握る指は燃えそうな程発熱していた

 

【Se-sT -第三章-】

 

風が変わった

城壁に囲まれたこの街でも風の変化位はすぐ分かる

私達魔族の長い耳はそういった事に関して秀でている

何時からソレを忘れてしまったのかは誰にも分からない

それでも私が覚えている限り、魔族全てが忘れてしまったという事実には成り得ない

 

ケイカ「北からの熱を帯びた風・・・ヤツが現れたか、面白い」

 

クッと口端が吊り上るのが自分でも分かった

この時をどれだけ待ち侘びたか

最早家族の仇とかそんな事は関係無い

ただヤツを殺せればそれだけでいい

 

「何か良い事でもあったのか?」

 

声のした方へ向くと右目の無い男が立っていた

男の名はカタル

私と同じ獣狩りを蝕業とする同業者であり、唯一同じ共通点を持っている男だ

 

カタル「お前に言っても遅いと思うがセストが現れた」

 

ケイカ「場所は?」

 

カタル「北極、奴等の出現範囲の手前だ」

 

ケイカ「前回よりも後退したな、何か意図があるのか?」

 

カタル「さあな、奴等の考える事はこっちにゃ分からんよ。行くんなら準備するぜ」

 

ケイカ「お前も来るのか?如何いった風の吹き回しだ」

 

カタルは伸びをすると眠そうな目をして答えた

 

カタル「こうも暇だと腕が鈍りそうだし、お前について行った方が楽しめそうだしな」

 

ケイカ「チームワークは苦手だぞ」

 

カタル「大丈夫だ、俺もする気は更々無えからよ!」

 

確かに戦力になる者は多い方がいい

例え最後に裏切るつもりだったとしても、一人より二人の方が何かといい事もある

そしてその日はその場で解散となった

出発は明くる日の早朝

そのまま帰れないかもしれない

別れは十分してから発とうという事になった

 

 

第一片

「終わりへと歩む」

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