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雪上にまた一匹の死骸が折り重なる

北極から目と鼻の先

奴等の出現地点に近付けば近付く程ウヨウヨと何処からともなく現れる

それを私は相棒である白き銃で撃ち殺す

極寒であって尚、胸の内は赤く熱く燃えている

 

カタル「っと!・・・これで此処いらは粗方片付けたな」

 

手にした双剣を手の中でクルクルと回すと腰に提げた鞘に仕舞った

黒く窪み落ちた右目を手であおぐ

寒さと戦闘の熱気で蒸し暑い。後無性に痒い。というか痛痒い

 

カタル「あー、痒い。眼窩っつーか奥の骨が痒い」

 

ダスク「そういえば、その右目って何でそうなってるんですか?」

 

ダスクは恐る恐るというより話題を見付ける様に話し掛けた

出発する前のいざこざもあってか、この微妙に不安定な関係から脱却したいと思っていたのだろう

カタルは右目をあおぎながら何でも無いかの様に答えた

 

カタル「昔セストに寄生されたんだよ、右目に奴等の一部を埋め込まれてな」

 

ダスク「埋め込まれたって・・・人獣に寄生されたら死ぬしか選択肢は無いんじゃ?!」

 

カタル「だから右目を引っこ抜いて九死に一生を得たってー訳だ。ま、俺の場合は完全な運ってヤツだわな」

 

カラカラと他人事の様に笑うカタルに、ダスクはあまりにも拍子抜けして閉口出来ない

私は握っていたままだった銃をホルスターに仕舞うと、タバコを取り出しながら二人に投げ掛ける様に呟いた

 

ケイカ「運なんて言い様によっては博打みたいなモノだ。ロマンの欠片もありゃしない」

 

カタル「ロマン・・・ロマンね。かつてこの星に君臨していた人間達も、お前の様にロマンを追い掛けてたのかね・・・っと!」

 

言うだけ言ってカタルはテントを張り始めた

 

カタル「これだけ隙を見せてても第二波が来ねえトコを見ると、奴等も休憩タイムっぽいし俺はもう一寝入りするわ。この三日間碌に寝てねえし・・・」

 

「そんじゃ、おやすみー」と言葉を残してカタルはテントの中に引っ込んだ

残った二人もその意見に賛成だったのか、各々のテントを張ると短くも安穏な夢という名の舟を漕いだ

 

 

第四片

「北極圏到達」

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