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カタルは自分が雪の中に埋もれているのに気が付いた

セストが出現してから今までの記憶がプッツリと途切れている

その原因が認識外の攻撃による物だったという結論に達するのにさして時間は掛からなかった

 

カタル「ちっ、俺の眼でも捉え切れねえとはな」

 

一度セストに寄生されそうになったからか、彼の視神経は常人以上の感覚になっている

セスト特有の能力なのかは定かではないが、物理的にステータス値を底上げされた様な感じである

カタルは雪上で一進一退の攻防を繰り広げるケイカから一旦目を離す

今この場に居る者の内、比較的弱者であろう人間を探す

 

カタル「・・・無事、だな。ま、流石に一般人じゃ傍観するしかねえしな」

 

その言葉通りに一般人代表・ダスクは只々戦いを見守る事しか出来ないでいた

その姿を一瞥して、ゆっくりと雪中から身を起こした

瞬間ズキンと痛みが響いた。如何やらあばらを何本か持っていかれたらしい

よく見てみると打撲した様な傷痕がある

それと何箇所か裂傷もあるが、雪の冷たさで感覚が麻痺していて痛みは感じられなかった

 

カタル「腕は・・・動くな。そいじゃあ・・・」

 

剣も運良く取り落としていない

まったく、自分は良くも悪くもリアルラックが強い様だ

化物の動きを残った左目で追いながら、気付かれる前に駆け出した

 

ケイカ「(予想はしていたが、雪上での足運びがこうも難しいとは・・・!)」

 

炎の化物「如何した、その程度で我に勝てるとでも思っているのか!?」

 

雪に足を取られた一瞬の隙を突かれ、大振りの一撃を喰らいそうになる

避けられない攻撃。見えるが故に後悔しか残らないその瞬間

咄嗟に銃を構えたが、その動作は数秒遅く、私は己の死を悟った

 

カタル「貰ったああああっ!!」

 

そこに割って入る一つの、否、二つの刃

それはカタルの双剣であり、それは炎の化物の左腕を文字通り寸断した

人間でいう肩から下の部分を綺麗とは言わずとも物の見事に分離させたのだ

 

炎の化物「・・・雑魚が、調子に、乗るなあっ!!」

 

ブンッと残った右腕を乱暴に振るう

それだけでカタルの体はボロ屑の如く宙を舞い、遥か遠くに落下した

続けざまに化物はこちらに矛先を向けようとするが・・・

 

ケイカ「遅いんだよ、蛆虫野郎が!」

 

既に私の右腕は今まさに振るわれようとしている暴虐の権化に伸びていた

チェックメイト、何度かの銃声が響き渡り化物はその唯一の攻撃手段を失った

 

 

第六片

「執着が終わり、終着が始まる」

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