発熱していた指は次第に冷めていき、一拍の溜息と共に平常に戻った
私は銃で化物の眉間を狙う
どんな生物だろうとソコを貫かれれば死ぬ事は自然の摂理
炎の化物「・・・ふ、戦いの場で冷静を欠くとはな。我もまだまだだったという事か」
その武人の様な潔さに私は初めて感心した
負けとは即ち死ぬ事だ
だというのに後悔するどころか、それを受け入れている
ずっと反吐が出そうだったのに、最後の最後でそう来るとは・・・
まあ、だからといって今から殺す事には変わりは無いのだが
ケイカ「冥土の土産に教えておいてやろう、貴様等が何故セストと呼ばれているかを。貴様等が現れるのは決まって北だった」
ケイカ「北方から来る獣、Septentrion-beasT。略してSe-sTって訳だ」
実にロマンも捻りも無い名前だろ?
そう言ってケイカは答えも聴かずに引鉄を下ろした
懐からタバコを取り出すとライターで火を点ける。煙が己の肺を満たすのを体全体で感じた
ふと顔を右後方に動かす
其処には見知った顔が居る筈だった
ケイカ「やっぱりな、心臓がドクドクドクドク五月蝿いんだ。テメエで無い筈が無い」
其処にはダスク=ブルーなんて居なかった
代わりに居たのは黒く長い髪を揺らして立っている青年
顔に見覚えは無いが、私はコイツをよく知っている
それはもう知り過ぎている位に、だ
黒髪の青年「何時から解っていた?」
ケイカ「最初からさ。本物のアイツは絶対に姉の傍を離れようとはしない、正真正銘のシスコンだからな」
それに他人が苦しんでいようが姉が最優先みたいな所もある
ヘタレと呼ばれても仕方が無いが、ある意味では一番頼もしいのかもしれない
黒髪の青年「成程、我は最初から猿芝居以下の事をしていたという訳か・・・」
ケイカ「そもそも人種が違うアンタに人の真似は無理だろう」
黒髪の青年「・・・・・・さて、約束の時が来た訳だが、大役を果たした君の願いを一つだけ叶えてやろうと思う」
ケイカはその問いに内心驚きつつも銃をホルスターに仕舞う
驚き過ぎて指が少し震えてしまったが
ケイカ「いいのかい、神様?トンでもない願いを言うかもしれないよ?」
黒髪の青年「どんな願いでも、だ」
ケイカはその言葉に「じゃあ・・・」と呟くと、静かに願いを言った
前終片
「彼女の願った事は」
完