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長い長い夢を見ている

自分に背を向け歩いていくあの人を、私はずっと見詰めていた

そこに後悔は無く、また悲しみも無い

あの人はふと立ち止まって振り返ると・・・

あの日の様に笑顔で私の名前を呼んだ

 

ステラ「ん・・・」

 

目が覚めた

緩慢ながらも覚醒に向かう頭を起こす

外でさえずる小鳥の声に紛れて、カリカリと小さな音がした

 

ステラ「誰かしら、こんな朝早くに」

 

手早く着替えを済ませ、寝癖が無いかをチェックして私は玄関に向かった

窓からは陽光が差しており、部屋の中を淡く照らしていた

玄関戸の閂を外してドアを開ける

 

ステラ「はいはい、どなたですか?・・・あら、あなたは」

 

其処に、銀色の毛並みを持つ一匹の狼が座っていた

行儀良く手足を揃えてちょこんと座っている狼は、途端グルグルと腹を鳴らしてか細く鳴いた

 

ステラ「・・・ふふ、これから朝食を作るんだけどあなたも食べる?」

 

少し微笑んで狼を招き入れる

狼は頭を力鳴く上下に揺らす

それがまるであの人に重なって見えて、私は何故だか苦笑した

今日は何だか良い事が起こりそう

根拠も何も無いけど、今私はそう思えてしょうがない

 

願いが叶うのならと、彼女は願った

願いよ叶えと、神様に祈った

 

―――それじゃあ私は狼になりたい。ずっと彼女の傍に居て、ずっと彼女を守ってあげたい。

 

あの時願った想いは、私から彼女への最後のプレゼント

 

 

最終片

「あの笑顔を守りたい」

 

■人物設定■

 

雨刻語(アマトキ カタル)

景火と同じでこの世界では珍しい漢字のフルネームを持つ男。32歳。

双剣を武器に多くのセストを屠って来た歴戦の戦士。

セストに寄生されそうになった右目を自ら引っこ抜いた過去を持つ。

根は結構大雑把な所があるが、やる時はやるタイプ。自分が魔族だという事に対しては全然こだわりが無い。

景火が消えた後も人獣狩りを蝕業として続けており、数々の伝説を残す事となる。

(内訳:水の祖に剣を突き立てたまま極寒の海中を二日耐え抜く、空の祖を西欧で撃墜)

鋼の大地のゴドーさんみたいな人である。

 

炎の化物

セストの祖にして炎の獣。武人の様な考えを持つ。

彼の上には水、氷、雷、土、空、毒の祖が居り、実は一番弱いという。

景火のトラウマである燃える風景は、本来この個体のブレスによって引き起こされた物。

初期構想では景火が肉を切らせて骨を絶つ方式で倒す予定だった。

が、執筆時にはその設定を丸ごと忘れていたので結果ああなった。

執筆直前までは覚えていたのに・・・。

 

黒髪の青年

景火の言によれば神様らしい。

どっかの世界の神様で、景火の様な存在達の周囲に現れ、その時へと導く役割を果たしている。

 

狼(名称不明)

最終片で登場した狼。それ以降はステラの家に住み着く様になる。

景火の最後の願いを受けて神様が叶えた形。

厳密には狼=景火ではない。でもステラにだけは凄く懐いている。

本来青徒の血には狼の因子が入っている事から、景火自身が望まなくてもああいう結果になったといえる。

その身は墓守の特性も持ち合わせており、ステラの死後も墓を守っていく事になる。

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