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昔の事で唯一覚えている事がある

私以外の何もかもが燃えている光景だ

親だった人も、妹だった人も

家も、誕生日に買って貰ったピアノも

全て燃えている光景だけだ

そして・・・

 

ケイカ「また・・・あの夢か・・・」

 

ベッドから起き上がる

汗を十分に吸ったシーツが肌に張り付いて気持ちが悪い

カーテンを開けると夜明け直後の様だった

私はタオルを引っ掴むと、衣服を全て脱いで外に出た

外の空気は朝方という事もあってとても澄んでいる

火照った体にキンキンに冷えた井戸水をかけると、相互作用でとても気持ち良い気分になる

 

ケイカ「ふぅ、さっぱりした」

 

ジャリと砂を踏む音がした

見るとこの村に来てから知り合ったバーズという男だった

バーズは一つ溜め息を吐いて

 

バーズ「ケイカ、そんな格好でいると『また』犯されるぞ?」

 

ケイカ「そいつ等なら終わった後に袋に穴を開けてやったよ」

 

相応の代償だろ?と笑いながら投げ掛ける

バーズは少し痛そうな顔をする

そして思い出した様に本題を口にする

 

バーズ「そういえば昨日はお手柄だったらしいね」

 

ケイカ「別に。ザコ程度じゃ時間なんか掛からないさ」

 

バーズ「流石プロは言う事が違うなぁ。出発は何時頃なんだい?」

 

ケイカ「昼には出るさ。その前に一発ヤらせてもいいけど如何する?」

 

バーズは心底残念といった風に肩を落とすと言う

 

バーズ「言ってなかったかな、僕はそういう事が出来ないんだ」

 

ケイカ「戦争で落として来たんだろ?残念だったな、私はそんな落し物は見てない」

 

バーズ「君ってかなり・・・いや、何時までもそうしてると風邪引くよ」

 

言うだけ言って踵を返す

 

ケイカ「タマが付いてりゃヘタレだ何だって言えるんだけどねえ・・・」

 

最後に頭のてっぺんから水をかぶって家の中に引っ込む

外の空気は朝方という事もあって、とても澄んでいた

 

 

第二片

「悪夢」

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