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物陰から気配を完全に消してその光景を見る

ある人から見ればそれは凄惨と言うだろう

またある人が見れば淫靡だと言うかもしれない

それともおぞましいと言うだろうか

私からしてみれば何も思わない。何も感じないし同情の一つもかけてやれない

 

「・・・っ・・・いやぁっ!・・・」

 

助けもしないし止めもしない

そんな事をして私まで巻き込まれるのは御免だ

 

「へへへ・・・こんだけやっても締りが衰えねえとは、やっぱりこいつぁ中々の上も・・・の・・・?」

 

「おい、如何した?やらねえんだったらオレが先にやっ・・・げえっ!?」

 

先程まで一心不乱に行為に勤しんでいた男共が驚きの声を上げた

そして我先にと血相を変えて逃げ出した

それを遠目に私は煙草に火をつける

煙を目一杯肺に吸い込むと、男共が来る前の事を暇潰しがてらに思い出した

 

晴れ渡る空に澄み切った空気

その二つが揃っているのだから、このまま村を出られればいいなと思っていた

だが私の悪運は如何やら自分が思っているよりも強かったらしい

案の定数日前に袋に穴を開けてやった男共に追い掛けられてしまった

適当に撒いて村を出ようと思ったが、これが中々しぶとい

そんな時に丁度前を歩く少女を見付けた

言葉巧みに近付いて、即座に信用と憧れを植え付けてあげた

そうして私は彼女にこう言った

 

ケイカ「実は先程から無実の罪で追われていてね。申し訳無いんだが・・・囮になって貰えないか?」

 

かなりのピンチだったからね、優しい少女に助けて貰ったんだ。その穢れの無い肢体を代償に

しかし何というか・・・数日前に来たとはいえ、私の事を知らない人間が居たとはね

余程外に出させて貰えない良いトコのお嬢様だったらしい

籠の中の鳥、外を知らない箱庭の住人、もしくは穢れ無き聖女とでもいうのか

 

ケイカ「いや・・・汚い泥に塗れて地に堕ちたのだから、最早聖女とは呼べないか」

 

クッと口端を吊り上げて足をとある場所へと向ける

さて、予定とは違うが面白い物が見れそうだし、もう少しだけこの村の空気を味わうとしよう

 

 

第三片

「転劇」

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