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目の前の男は私の言葉を聴いて愕然としていた

目を見開いてあからさまに狼狽している

足を向けた場所はこの村の長が居る所。早い話が村長様の家だ

 

ケイカ「部外者がこう言うのもアレですが、村全体の秩序を考えるとお嬢さんを辱めた方達を野放しにするのは得策では無いと思うのですが?」

 

やたら落ち着いた人格を作り、気取られぬ様に嘘の同情を前面に押し出す

しかも温和な表情の上、大人の女性っぽさも演出

これで引っ掛からない相手は今まで居なかった。いや一人だけ居たか

まあ、今はそれは如何でもいい

 

「確かにそうではあるが、私はそいつ等の顔を知らない。だから・・・」

 

ケイカ「そこはご安心下さい。現場から逃げ出して来たであろう方達の顔は私がバッチリ見ておりますから」

 

見たというかそもそも面識があるレベルなのだが

 

「本当ですか!?そ、それでは大変申し訳無いのですが頼まれて頂けませんか・・・」

 

ケイカ「ええ、内容としましては犯人達の処理・・・で宜しいですね?」

 

「は、はい。あの、これをどうぞ」

 

如何やら報酬は前払いの様だ

この村長、人を見る目はあるらしい

私を外見だけで腕利きだと判断するとは中々の目利きだと思う

ただ、その人間の中身までは分からなかった様だが

 

ケイカ「確かに頂戴いたしました。それでは早速仕事に取り掛かりますので、ご報告は後ほど」

 

「よろしく、お願いします」

 

深くお辞儀をして見送ってくれる

さーて、楽しい楽しいショーの始まりだあ

大の男数人を相手に女一人で戦いを挑むなんてロマンに満ち溢れてるじゃないか

 

ケイカ「胸が打ち震えて、こんなにも心臓がドクドク叫んでて・・・・・・っ!?」

 

振り向いても誰も居ない

確かに心臓がドクドク叫んだ、有り得ない位に

それこそもう一人の私がそこに居て、同じ鼓動が重なり合ったみたいに

だけどまだその時じゃない事は私が他の誰よりも知っている

そうだ、今はまだ・・・その時じゃない

 

 

第四片

「繭の中の君」

 

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