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【外伝・邪狼編】

 

大変な事が起きた

アイツはそう言った

今までだって大変な事はあった

でも、今回程じゃなかったと記憶している

 

邪狼「次元時間未明、ある世界にロストロギアを確認。そしてソレの暴走により次元震が起きた」

 

簡潔な言葉

普通は「はあ、そうですか」と返す所だが

この時ばかりはそうもいかなかった

 

蒼麻「次元津波ってやつか・・・」

 

邪狼「そうだ、震源地から最も遠い魔界や外神界、タネローンはいいとしても、此処は例外だ。何せあまりにも近過ぎる」

 

次元同士は隣り合っている事が少ない

次元世界は『ドームに覆われた複数の都市』だと思えばいいのだ

密集地帯は隣接しない

それが次元世界の常識なのである

だから今回の様に世界が隣接している事は稀なのだ

 

赤「過程については言及しないが、今知りたいのは結論だ。今の状況は?」

 

邪狼「余波で外殻軌道上の観測衛星が大破した」

 

影裏「チョット待ツノジャ。ソレハマサカ『斑鳩』デハナイダロウナ?」

 

斑鳩とは天星世界が出来た頃に創造された衛星である

全架空存在都市の事象を観測し

そしてそのデータを邪狼の元へと送信する役目を担っている

 

蒼麻「何でお前がそんな事を知っているんだよ」

 

邪狼「アレは魔界との共同製作だ」

 

そんなの今知ったぞ

まぁ、俺が全て把握してるのは神社だけだから仕方無いか

 

邪狼「その斑鳩なんだがな。ほんの300年前に増設を行った」

 

影裏「マサカ、オ主兵装ヲ・・・」

 

邪狼「エンドリカル・トレーシングを行われそうになれば、誰だってそうするだろう?」

 

影裏「ムゥ、シカシ・・・」

 

蒼麻「お前等、今は口論してる場合じゃねえだろが」

 

赤「ああ、大破したとなれば引力に引っ張られるのも時間の問題だ」

 

藍は一人思った

流れ的に続くのだろうか、と

 

破章

 

ロストロギアは、ただお話の流れでそうなっただけです。プレシアだとかアルハザードだとかとは関係無いです

 

 

 藍は一人心の中で思う

続いちゃった!、と

 

世界の終わらせ方、改め

 

【外伝・邪狼編】

 

邪狼「斑鳩が落ちてくる時間までは算出出来ないが、刻一刻を争う事だけは分かっている」

 

赤「目の前の問題は三大エリアの住人の避難と、斑鳩への対処の二つだな」

 

邪狼「斑鳩を破壊すればもう一つの方は如何にでもなる。まずはそっちを優先するぞ」

 

蒼麻「ちょっと待て、そんな超質量の物体を如何やって壊すんだよ?」

 

それは至極真っ当な質問

しかしその問いを予見していたかの様に邪狼は言った

 

邪狼「お前には今から神都市に向かってもらう」

 

蒼麻「神都ってあの要塞都市に何の用が・・・って、まさか!?」

 

影裏「オ主、“アレ”ヲ使ウノカ!?」

 

邪狼「使える物は何だって使う」

 

蒼麻「使えんのかよ?前大戦の置き土産だろ?」

 

邪狼「整備の方が俺様が言っておく。お前はそれを使って・・・・・・後は分かるな?」

 

真剣な表情

複雑といった方が正しいかもしれない

これが本当に正しいのか、違う方法もあるのではないのか

だが今はこれしか浮かばない

 

蒼麻「・・・・・・仕方無えな。俺しかいねえんだろ?適役が」

 

一を守る時、十を切り捨てるか

それとも一を切り捨てるか

後者を選んだ邪狼が正しいとは思えない

それは前者を選んだとしても同じ事だ

蒼麻はそれを知ってか知らずか賛成した

ならば実行せずして如何する?

 

邪狼「すまねえな。世話かけるぜ、蒼麻」

 

蒼麻「今に始まった事じゃねえだろ、邪狼」

 

この場に居る者全員がそれしかないと頷く

これが只の人間だと反対意見も上がるのだが

彼は人外。人を超越した者

逆に言えば彼にしか出来ない事なのだ

 

邪狼「神都エリアまではかなりの距離がある。足が要るだろ、これに乗っていけ」

 

言って指を鳴らす

すると何も無い空間から一台のバイクが現れた

その物々しいデザインのバイクを見て蒼麻は驚きを隠せない

 

蒼麻「お前、これって・・・」

 

邪狼「そう、MTT・タービン・スーパーバイク。俺様のスペシャルチューンナップ仕様『猟犬』だ」

 

絶章

 

MTT・タービン・スーパーバイク

某国で開発されたガスタービン搭載のトンデモオートバイである

ガスタービン搭載を主張するかの様な大径の排気管と

ジェット機そのものの甲高い金属音という特徴がある

最高速度は約402km/hに達し、スタートから365km/hまでの加速にかかる時間は僅か15秒という性能を発揮する

またバックミラーの代わりにリアビューカメラが装備され、フロントのLCDモニターに映し出される構造になっているのも大きな特徴といえる

しかし、ガスタービン・エンジンは慣性力が大きく、短時間で急激な回転数の増減が出来ない為、運転には特別なテクニックが必要である

その点を踏まえて考えてみると、通常運用では明らかに役不足である

故にこの状況での運用となった訳である

(引用:wikipedia)

 

【外伝・邪狼編】

 

蒼麻「Y2K持ってるとは知らなかったぞ」

 

今更だが別名が「Y2K Turbine SUPERBIKE」である事を追記しておく

Y2Kって何の略かって?知らんがな

 

邪狼「若気の至りって奴だ。それとコイツにはオプションを付けてある」

 

蒼麻「何だ、スライド変形でもするのか?」

 

何処の平成ライダーだ

 

邪狼「操縦者の魔力を上乗せする事で速度を上昇させられる。最高で600は出る筈だ。まあ一回きりしか出来ないから、タイミングを間違えるなよ」

 

蒼麻「バイク会社から苦情が来るぞ」

 

邪狼「知らん」

 

まったく・・・何処の特撮なんだか

一回きりなんて言われたら使ってみたくなるじゃないか

しかしタイミングなんて言われると

この後何か困難が待っている様な気がしないでもない

あれ、今フラグ立てた?

蒼麻はバイクにまたがる。ハンドルも手に良く馴染む

吹かしてみると、これはまた何とも良い具合に耳に残る騒音

ヘルメットとか邪魔な物は要らん。どうせ取り締まる様な奴なんてこの世界には居ない

 

蒼麻「行って来るぜ!」

 

ハンドルを思いっ切り回し、蒼麻の乗るバイクは勢い良く神社を飛び出した

まずは天神町を出て鶴ヶ谷市に入らなくては

因みに転送陣は斑鳩からの供給で動いているので、全くの役立たずと化している

それがバイクを使う理由である

 

邪狼「よし、こっちはこっちで落ちてくる予定の破片の破壊作業だ」

 

赤「オレ達だけで足りるのか?」

 

影裏「ウム、流石ニ人数ガ少ナ過ギル」

 

邪狼「此処が何処か忘れたのかよ?適任ならいっぱい居んだろうがよ」

 

邪狼は不敵な笑みをこぼす

ぶっちゃけその後に続く一言に衝撃を隠せなかった

正直、こんな状況じゃなければ延髄砕きをお見舞いしていたかもしれない

使える物は何だって使う

その言葉通りに行動しているだけなのである

ああ、世は正に無常也

 

邪狼「天神町の住人共がよ!」

 

コイツ、秋以上の悪魔か!

 

 

烈章

 

 

天神町

蒼黒神社がある町の総称

人口は7000人ほどで、6:4の割合で一般人と能力者が住んでいる

別段冷遇されるでもなく、優遇されるでもなく住人達は日々を過ごしている

蒼黒神社の方で何か起こったとしても、何時もの事だと思っている

だが、この時ばかりは流石に身の毛が引いたと後に住人は語った

 

【外伝・邪狼編】

 

邪狼「テレビで言っている通り斑鳩が大破した。そしてその破片の大部分が直下にある天神町に降って来るらしい」

 

住人達はどよめき立つ

そんな住人達を見渡して邪狼は付け加えた

 

邪狼「そこで能力を持つ者達に協力を申し出ようと思う。我こそはという者が居れば名乗り出てくれ!」

 

その言葉に一同が静まり返る

斑鳩が壊れた。その破片が落ちて来るその悲惨な状況は解る

しかし、それは命を晒す行動だ

生半可な気持ちでは名乗りを上げられない

その心の同様を見抜いた邪狼はもう一つ付け加えた

 

邪狼「この破壊作戦に参加した者には『欲しい物を二つ与えよう』」

 

その言葉、言霊となる

欲しい物を二つ。普通は一つの所を二つである

その言葉に住人の多くは目の色を変えた

どんどん名乗りを上げる住人

笑顔の下に黒い笑顔を形作る邪狼

その様子を悲哀の眼差しで見つめる赤と影裏

使える物は何だって使うのさ、例えどんな手を使っても

 

赤「悪魔め・・・」

 

影裏「不憫ナ・・・」

 

名乗りを上げた住人、その数31

情報収集、事前察知も含めての31人である

他の者は特に興味が無い、自分の身だけで精一杯というものである

それでも31という数字は心強い

例え物で釣った数字だとしてもである

 

邪狼「よーし・・・後は蒼麻に賭けるしかねえな」

 

赤「まあ、それが一番の心残りでもあるんだがな」

 

影裏「ウム、マアナ・・・(苦笑)」

 

 

転章

 

 

邪狼達が破壊作戦で人を募っている頃

一方こちらでは・・・

 

蒼麻「ったく!何だってんだよ、この亀裂はよ!?」

 

縦横無尽に入った亀裂

道路の真ん中が割れている

片側は同じ位置に

片側は間に数メートルの大穴を開けて

 

蒼麻「これも斑鳩の破片の仕業だってのかよ?」

 

確かに大穴の遥か下方には直径何百メートルもの物体が腰掛けていた

ソレが斑鳩から外れた破片の一部なのだろう

進路が絶たれてしまった

しかし、こんな事で諦める訳にはいかない

何としてでも神都市に向かわなければならないのだ

だから蒼麻には他に方法が無かった

 

蒼麻「ちっ、分の悪い賭けだぜ」

 

頼みの綱はこちら側の端が少し・・・ほんの少しだけ上方に向いている事

その少しの部分に賭ける

50:50でもない。99:1位の賭けだ

 

蒼麻「幸運の女神が憑いてるのを願ってるぜー?!」

 

数十メートルの助走

フルスロットル

バイクはけたたましい音を上げて走る

ヘリに差し掛かり、バイクは飛んだ

そうだ、言葉通り“飛んだ”のだ

 

蒼麻「あの野郎、他にも何かオプション付けやがったな?!」

 

だがソレのおかげで難関を越えたというのもある

欠点とは何も悪い事だけではない

欠点同士がお互いを補う事もあるのだ

 

蒼麻「ミノ○スキー粒子でも出てるのかって位に飛んでるけど、コレはコレで助かったぜ!」

 

だがしかし

ああ、駄菓子菓子

難関は他にもあったのだ

 

蒼麻「如何やって止まりゃあいいんだよコレ。・・・・・・今回のが終わったら、アイツ絶対殺す!!」

 

それと同時刻

邪狼は黒い笑みを浮かべながら盛大なくしゃみをしたという

 

 

車章

 

ミ○フスキー粒子は完全に車体から放出してます

デモベにお空を飛んでるトンデモバイクが出るので、猟犬も飛ばせてみました

これで猟犬には何の未練も無い

 

 

鶴ヶ谷、神都、山上

この三大エリアを統率する権限者等が集まる会議がある

それが統幕会議

エリア間をモニター同士で繋ぐ会議である

そしてソレは今この時も開かれている

―――議題は勿論、斑鳩についてである

 

ドレッドヘアーの女性「さて・・・困った事になったねえ」

 

向かって右に映っている人物が話し出した

彼女の名はリグリット=オルファ

山上エリアを統率する女性である

 

軍服の老人「住民の避難を行おうにも破片の影響で、陸路が遮断されてしまったからな」

 

向かって左に映っている海軍制服に身を包んだ人物

彼の名は群守睡軍

某国で有名な水軍の分家筋で、鶴ヶ谷エリアの統率権限者である

 

顔に傷のある男「吾が街は持ち堪えてはいるが、如何せん解決策が無いからな」

 

中央に映っている人物は重くため息を吐いた

男の名は堂掘岩蔵

要塞都市として知られる神都エリアの統率者である

三人が頭を抱えて唸っている所に、けたたましい騒音が響く

その音の正体はすぐに分かった

会議室の大扉をブチ破り、一台のバイクが入って来たからだ

騒然とする三人とバイクのシートから降りてくるその人物

 

蒼麻「あーあー、こりゃ修理が必要だな・・・」

 

大破とまではいかずとも所々に傷が入り、装甲も何箇所か壊れている

さて、とバイクから目を離し背後に振り返るとこう言った

 

蒼麻「解決策を持って来てやったぜ?感謝しろよ、ジジババブラザーズ?!」

 

完全に上から目線な物言いだった

 

 

史章

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