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静まり返る会議室

長い沈黙の後、堂掘岩蔵が口を開いた

 

堂掘「貴様、一体何者だ?!」

 

それは怒号の様だった

突然乱入してきた侵入者の態度に対してだろう

その問いに投げやり気味に答える侵入者

 

蒼麻「蒼黒神社所属、二代目神主・如月蒼麻だ」

 

リグリット「ああ、如月だったか。逆光の所為か顔が見えなかったよ。元気にやっているかい?」

 

蒼麻「姉貴面すんな。俺の方が何百倍も年上だろうが」

 

吐き捨てる様に言う

その反対側のモニターからは・・・

 

睡軍「御無沙汰しております。五十年振りですかな、如月中将殿」

 

蒼麻「ん、群守上級大尉だったか。そうか、もうそんなに経つんだな・・・」

 

睡軍「今回はどの様な用件で?」

 

蒼麻「そう、それだ。神都エリアの統率権限者に頼みたい事があってな」

 

話を振られた堂掘は眉をひそめる

先程から他の二人との会話で出て来た単語

「何百倍も年上」「五十年振り」

それを踏まえて考えても、目の前の男はあまりにも若過ぎる

それではまるで、男が年を取らないとでも言っているかの様だ

 

堂掘「頼み事だと?何だ、言ってみろ」

 

圧されては駄目だ

自分は統率権限者。人々の上に立つ者

姿勢を崩しては駄目なのだ

王の様な威厳を保たなければならないのだ

 

蒼麻「斑鳩破壊の任を預かった。前大戦の置き土産である『アレ』を使わせて貰いたい」

 

堂掘「・・・『グレイシア』を使おうというのか・・・」

 

堂掘は目を見開く

グレイシアという大型コイルガンの事ではなく

それを使おうとしている男に驚いている

堂掘岩蔵は知らないのだ

人外という存在を

蒼黒神社という抑止力的存在を

自分達を創った創造神という存在を

知り得ないモノを人は解ろうとしない

故に未完は無知だ

彼もまた未完の存在なのである

 

 

第二部・一章

「グレイシア」

 

最初はレールガンだったんですが、弾体に電流が流れると知って「これはあかん」てなった

流石に電流が流れてる状態で発射までスタンバイとか鬼畜過ぎるし・・・

塵になっても再生可能だとしても、超長時間電気流れっぱって落ち着かないと思うんだ

つか連続死だよね、それって

 

 

過去に大きな戦争があった

災厄戦争。300年前に起こった異次元間戦争の通称である

第三者によって作り変えられた文明を、元の状態に戻すと云われるエンドリカルトレーシング

他次元からの干渉によって天星世界は戦わざるを得なくなった

その戦争に使用されたのが、件の斑鳩であり、グレイシアである

 

【外伝・邪狼編】

 

堂掘「何の為にそこまでする?」

 

蒼麻「あ?世界を守る為とか言って欲しいのか?」

 

その言葉に少しムカッと来たが、顔には出さずに話を続ける

 

堂掘「なら何故、斑鳩を止めに行くのだ?理由が無いだろう」

 

その問いに蒼麻はぶっきらぼうに答えた

その横顔は少し照れを含んでいる様にも見えた

 

蒼麻「口を開けば俺の悪口ばっか言ってたクソ親父が珍しく頼んで来たからな。最初で最後の親孝行って奴だ・・・」

 

リグリット「それもそれで珍しいね。アンタがあの方を父親扱いするなんて・・・」

 

蒼麻「あんなんでも、れっきとした“親”だからな」

 

リグリット「まあ、元を辿ればアタシの親でもある訳だし。・・・そこの鉄號王さんは信じないと思うけどね」

 

堂掘岩蔵は考える。親というものについて

如月と名乗る男にとっての親とは、つまり生態系の始祖の様なものだろう

リグリットの言葉を借りるなら、人類全体の家系図を一まとめにした場合の始祖となる

とすれば、自ずと解答に辿り着くのだが・・・

それで果たして良いのだろうか?

その答えに辿り着いて、知ってしまって果たして良いのだろうか?

確かに未知は未完ではあるが、既知が完成であるとは限らない

それを知ってしまえば、今までの自分は如何なってしまうのか

それが恐いのだ

 

蒼麻「無言は承認として受け取るぜ。こっちには余り時間が無いんだ、こんなトコで足をとられたくないんでな」

 

蒼麻は駆け出す

猟犬は使い物にならない

しかし、目的地はすぐ其処だ。全力で走れば如何にかなる

―――此処は要塞都市。機械が集まる国

そして・・・災厄戦争の爆心地

 

 

二章

「全ての父」

 

世界の為に世界を守るなんて偽善的な事は言わない

でも頼まれたんならやるっきゃないだろう!

そんな蒼麻が俺は大好きです

 

 

蒼麻「それじゃあ爺さん、頼んだぜ」

 

整備士「うむ・・・お前さんも気を付けてな」

 

巨大な弾体に乗り込む

撃ち出すという事は生身では駄目だ

それでは射出した瞬間に全身が破裂する

再生に時間は掛からないが、一分一秒でも無駄にはしたくないのだ

鉛色の弾丸。照準は外殻軌道上に在る斑鳩

 

整備士「さあて、久し振りにドデカイ花火を打ち上げるかのお!」

 

現場に火が付いた

それを遠くに聞きながら、弾体の中で蒼麻は一人思考に耽る

・・・蒼麻自身、不安が無い訳ではない

斑鳩に着いた後の事を考えると、背筋が凍る様な思いだ

別に外殻に出たとしても自分なら大丈夫だろう

ただ、自分は斑鳩の事を全く“知らない”

未知は恐怖を煽る。とても嫌な予感がするのだ

この感覚は身覚えがある

 

蒼麻「そうだ・・・・・・あれは確か、」

 

初めて自分の片割れに出合った時―――

グレイシアが軋みをあげる

長年使っていなかったからか

それとも喜びに震えているのか

砲身に備え付けられたコイルに灯が点る

紫電が弾け、弾体が加速する

音は予測よりもずっと小さかった

 

蒼麻「・・・チッ、所詮コイルガン程度じゃ外殻までは無理か」

 

コイルガンの構造は知らないが、レールガン程じゃない事だけは知っていた

最大初速が少なければ落ちるまでの時間も早い

ならば違う所から補うまでだ

それは何処からか?

 

蒼麻「弾体に強制接続。魔力入力開始、・・・・・・さあ、俺の魔力を食って外殻(そら)まで飛びやがれ!!」

 

魔力の渦が弾体の後部から観測される

渦は謂わばロケットの推進剤の役割だ

爆発的な勢いに押され、弾体はあっという間に成層圏を抜け外殻に辿り着いた

想定外の摩擦熱に耐え切れなくなり弾体は破裂

何も無い世界に投げ出される蒼麻

 

蒼麻「真空って訳じゃないのか。それはそれで好都合」

 

そう言うと、右足で空を蹴った

それだけで体は前へと進み・・・

そして見えた。斑鳩だ。それは正真正銘、時空震に巻き込まれ墜落する筈の斑鳩だった

蒼麻は言葉を飲み込んだ

コレが斑鳩だとでもいうのか?これではまるで・・・

 

 

三章

「ソラとチの境界」

 

Wiki見てもよく解らなかったので、かなりの自分的見解をしております

指摘されても反論出来ないのでしないでね。ついでに心も折れるかもしれない

 

 

蒼麻はズボンのポケットから携帯を取り出す

この男、ある意味フリーダム

アドレス帳から目的の番号を探し出して掛ける

数回のコールの後に相手が出る

 

『如何した、何かあったのか?』

 

蒼麻「テメ、このアホ神!こいつは如何いう事か説明しやがれ!!」

 

邪狼『説明って何の事だ?』

 

蒼麻「斑鳩の事に決まってるだろうが!テメエ、衛星って言ったよな?!」

 

邪狼『ん?ああ、確かに兵装が付いてたりはしてるが、れっきとした衛星だ』

 

その言葉を聞いてからもう一度斑鳩の方を向く

それは衛星には全然見えず

 

蒼麻「・・・俺には馬鹿デカいロボットに見えるんだが?」

 

ドゥーユーアンダスターン?

もう一回言った方がいいか?

 

蒼麻「何処の世界にスーパーロボットの外見そっくりの兵装付ける馬鹿が居るんだよ!!?」

 

邪狼『はっはっはっ、戦争に巨大ロボットは必須だろう!つまり、これは正当な理由に基づいt・・・』

 

無言で電話を切った

もう、いい加減にしやがれ

野郎の茶番には付き合いきれねえ

どうせ分かり切ってる事は一つだけなんだ

 

蒼麻「メインコンピューターをブッ壊して、墜落を食い止めて、一件落着。簡単な事だ」

 

そうだ、簡単な事だ

取り敢えずはそうだな

今やらなきゃいけない事は・・・

 

蒼麻「―――入り口は何処だ?」

 

これ全部調べるのか?と途方に暮れる人外が此処に一人

 

 

四章

「苦労は買ってでもしろ」

 

全長は80m位?斑鳩でけえ、半端無くでけえ

 

 

必死の捜索の末に漸く入り口を発見

胸部にハッチってロボットもののお約束なのか?

内部に入ると無重力だった

重力制御が働いているという事は、「まだ」落ちるまで余裕があるという事だ

 

蒼麻「簡素な造りなのは観測衛星だからか?」

 

通路は全てが直線

たまに曲がり角があったりするが、それ以外は直線

通路の途中には通路同士を仕切る機密扉がある

それも全く起動していない

おかしいと思うのは当然だった

 

蒼麻「まるで誘われてるみたいだな・・・」

 

しかしこの衛星の中には自分しか居ない

蝶の様な外見のこの衛星の入り口は、触れただけで開いた

誰かがこちらの様子を見ていて意識的に開いたかの様に

そうして漂った先に見えたのは今までとは趣の違った扉

そこにはアルファベット表記で『MD-SaK』と書いてあった

 

蒼麻「MD・・・メインデッキか?」

 

扉を開ける。それはすんなりと開いた

番号や識別等無かった。あまりにも無用心な造り

窓から外の景色が見える。とすると此処はロボットの頭の部分に相当するのか

見渡してみると成程、今自分が立っている場所は一番高い場所に位置している事が分かった

何段かの階段を下りると、目の前に巨大な円筒状の物体が鎮座している

何本もの太いチューブが繋がれた物体

 

蒼麻「これがメインコンピューターか」

 

大きさは部屋の半分より少し高い位か

モニターには何の表示もされていない

・・・と、コンピューターの脇の装置が独りでに動き出した

それは一種の投影装置らしく、ホログラム映像には一人の少女が映っている

 

『ようこそ、青き風よ。』

 

蒼麻「自我が、あるのか・・・?」

 

『わたしは空主羽。空の主、空主羽。話は彼から聞いています。』

 

蒼麻「驚いたな。人工知能を搭載してあるのか・・・」

 

空主羽『はい。自らで考え、進化する可能性を秘めた人工知能が、わたしの中には組み込まれています。』

 

蒼麻「自我がある相手は破壊し辛いな」

 

空主羽『ご心配なさらないで下さい。この場に居るわたしはいわば分身の様な物。オリジナルは地上にあります。』

 

蒼麻「それを聞いて少し心が和らいだ。流石に問答無用で破壊するっていうのもな(苦笑)」

 

空主羽『こちらの計算上では、今から30分後に第二駆動炉が機能停止し、ミサイル格納庫が切り離されます。』

 

蒼麻「ちょっと待て、今何て言った?」

 

空主羽『・・・わたしの両肩に開閉式のハッチがあるのが見えたと思います。あれがミサイル格納庫です。』

 

蒼麻「おいおい、中には何が入ってるんだよ」

 

空主羽『「SS-1C Scud-B」、並びに「Depleted uranium ammunition」です。』

 

蒼麻「・・・・・・あ、あの野郎、なんて物を積んでやがるんだ!!」

 

悪夢だ

それは何もかもを巻き込む悪夢

 

 

五章

「終わりが必ず来る」

 

 

邪狼「ぶえっくしっ!!」

 

赤「大丈夫か?」

 

影裏「春ニハマダ早イシノ」

 

邪狼「(・・・・・・気付かれたみたいだな。いいさ、それも俺様の罪だ。全部引き受けるって決めたんだ)」

 

蒼麻「スカッドミサイルは改良型の方か。地対地だからまだ如何にでもなるけど、問題は劣化ウランの方だな」

 

空主羽『外殻で破壊すれば地上の汚染は防げます。』

 

蒼麻はその言葉に唸る

確かに地上との完全な隔たりを持つ外殻で破壊すれば汚染は防げるだろう

しかし、それでいいのだろうか?

ならば他にどんな方法があるのかと聞かれれば何も無いとしか言えない

 

空主羽『良策が浮かばないのでしたら、この方法に賭けるしかありません。大丈夫、外殻にもほんの少しですが浄化作用はあります。』

 

蒼麻「ウダウダ考えてるより行動した方が良いのは分かってる。だけどな、こればっかりは無視出来ないんだよ」

 

ほんの少しの浄化で何年待てば完全に消し去れる?

本当に最後の最後まで消し去れるのか?

机上の空論なんて実験にも劣る

それが解ってるからこんなにも消極的になるんだ

 

空主羽『周りの方々はあなたのその想いに共感するのでしょうね。』

 

蒼麻「空主羽・・・?」

 

斑鳩が唸りを上げる

それは最後の息吹か

そこかしこの機器類が煙を上げている

火花を飛ばし始め、過負荷を起こしているのだと解る

 

蒼麻「何をしている、空主羽?!」

 

空主羽『短い間でしたが、あなたという人間に出逢えて良かったと思います。再計算した結果、ミサイルは引力に引かれ地上に落ちる事が解析出来ました。今からその対策を行います。』

 

蒼麻「待て、空主羽!お前何をする気なんだ!?」

 

空主羽『メインデッキよりセントラルデッキを切り離します。青き風よ・・・願わくば、あなたが何時までも変わらず健やかである事を。』

 

蒼麻「空主羽、俺は認めないぞ!自己犠牲で何が救われるっていうんだ!!ソレがオリジナルの結論だって言うのかよ!!?」

 

切り離された部分毎、引力に引かれ落ちて行く

徐々に遠くなっていく斑鳩と空主羽

小さくなるまで見続けて、蒼麻は残骸と一緒に地上に落ちる

下を見上げれば無数の明かり。人々の営み

そうだ、帰るんだ、大切な人達が待っている世界に

あれが空主羽の出した結論ならそれでいい。それでいい事にする

本当は見逃せない事だけど、ソイツが決めた答えを他人が如何こう言えはしない

アイツは空を守る為。俺は地を守る為

それで、いいんだ・・・

 

 

六章

「出逢いと別れ」

 

出逢いから別れまでが早過ぎるだろ、オイ

時間が開いちゃうと投げやりになるね。それが作者の悪い所です

それはそうと、蒼麻は薄々気付いてるみたいですね

何の事かって?それを考えるのも外伝の要素の一つです

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