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その日、出先から帰って来た私の目に映った物は・・・

 

「何故に葬式が行われているんだ」

 

自分の住んでいる家に集まる沢山の人と
黒と白のラインの幕が垂れ下がる庭だった

 

【死に難いヒト】

 

庭の中程に長机とパイプ椅子が置かれ、黒い喪服に身を包んだ人々が帳簿に名を書き連ねている
そしてその対応をする人物に私は全く見覚えが無く、一人この中で浮いている存在だと否応無く自覚させられる
と、件の人物が私に気付いた
私の服装は着物ではあるが喪服とは程遠く、そもそも黒地ではなく上が白で下は紺の動き易い格好だった
その事に何かを察したのか件の人物は私に一言問い掛ける

 

男性「つかぬ事をお伺いしますが、もしやここの家の方ですか?」

 

もしやも何もそれ以外の何ものでもないのだが、ここは素直に肯定の意を示す

 

私「ええ、そうですが・・・この事態は一体?」

 

男性「わたくしも人伝から聞いたのですが、一人の少年が学校の屋上から飛び降りたとの事で・・・」

 

飛び降りた?あの子がか?
容易に信じ難い事ではあるが、どうやら目の前で話す男性の話によると私の息子が学校の屋上から身を投げたとの事であった
イジメがあっただの、興味半分だの、ゲーム脳だ等と息子をよく知らぬ者達は口々に言っているらしいが
そもそもの問題その程度の事で世を儚む様な性格を息子は持っていない

 

私「息子は今どちらに?」

 

そう聞くと中に通された
否、私はあの子の母親なのだから中に入るのは当然の事である
広く四角い部屋の奥に木製の長方形の箱が鎮座している
蓋に備えられた小窓は閉じており、ただただ後ろの方から顔も知れぬ人々の泣き声が聞こえて来る
そしてソレに混じって何やら不穏な言葉も聞こえて来た

 

不良A「やっと死んだぜアイツ」

 

不良B「正義の味方ヅラしてんのが気に食わなかったんだよなー」

 

不良C「俺がちょっと背中蹴っただけで簡単に落ちてったから楽だったよな」

 

・・・ああ、彼等の着ている制服には見覚えがある
確か息子が通っている学校の物だ
成程、では彼等が主犯格であり同時に実行犯であるのか

 

私「お前は彼等に灸でも据えたかったんだろうが、少々やり方を間違えた様だな。ここまで事態を拡大させる様では皆伝は未だ遠いな」

 

瞬間棺桶の蓋が真上に弾け飛んだ
参列していた人々は何事かと目を見張り、先程までヒソヒソと下種い笑顔で話していた少年達は一様に驚きの声を上げた

 

「わーかってるよ、今回のは完全に俺の落ち度だよ!ちょっとした出来事で終わらせるつもりが大事件に発展しましたごめんなさい!!」

 

私「解っているのならそれでいい。それで奏覇、お前はこれからどうするのだ?」

 

奏覇「犯人も判明した事だしな!コテンパンに叩き潰す!!」

 

私「ふむ・・・元気があってよろしい。時に奏覇、二人は何処に?」

 

奏覇「父ちゃんは町内会の慰安旅行、爺ちゃんなら婆ちゃんのトコだと思うけど?」

 

私「そうか。私が出掛けてからひと月は経つものな。最後に一つ、表に居る男は何処のどいつだ?」

 

奏覇「俺が校庭の旗掲げるトコに刺さってたのを見付けたとか何とかで、親戚だとか言って勝手に葬式始めたんだよ」

 

私「葬式代行・・・この場合は香典泥棒か?まあいい、お前はそちらを片付けろ。私は表の男を片付ける」

 

言って腰に佩いていた刀に手をかける
それはいつか何処かで誰かが持っていた白鞘の刀
1000年経っても切れ味の衰えぬ遠き日の思い出

終わり


目が覚めたら目の前に小さい窓があった
そこを通して見えるのが天井なので俺はどうやら寝かされているらしい

 

俺「(確か屋上から落ちて・・・何だっけ?校庭にあるポールにブッ刺さったトコまでは覚えてんだけどなあ・・・)」

 

うん、確かそうだ
今俺が着てる死装束が若干凹んでるのは胸に風穴開いてるからなんだろう
何つーか死に難いとはいえ傷の治りが遅いのも考えモンだな

 

奏覇「・・・って事が昔あってな。それからというもの出来る限り面倒事には関わらない様にしてたんだがな」

 

女性「いきなり昔話を始めるとは思わなかったぞ。しかも初対面の女の前で。というか先に言う事があるだろうに」

 

奏覇「ああ、水浴び覗いてごめん。いいおっぱいだな、後で揉ませてくれ。いや今揉ませろ!」

 

女性「頭に蛆でも湧いとんのか貴様」

 

奏覇「分かった、更に10万払って本番追加だ!今日は朝までにゃんにゃんフィーバーだ!!」

 

女性「ヒトを風俗嬢みたいに言うな!重ねて言うが貴様とは初対面だ!!」

 

奏覇「仕方無い・・・ならば拳で言って聞かせよう!アンタのおっぱいを好きに出来る権利を賭けて!!」

 

女性「ふっ、私もそろそろ苛立ちが頂点に達しそうだ。貴様の様な話を聞かんガキはこの私の黒銀で性根を叩き直してやる!」

 

言うと女性の隣に黒くて大きくてゴッツイ鬼が現れた
月の光を受けて尚赤く妖しく光る両手の鋭いツメ
今か今かと待つその姿はまるで獲物を品定めするジャッカルの様

 

奏覇「俺は木更木奏覇!アンタの名前は?!」

 

女性「無礼な輩に名乗る名は持ち合わせてはいないが、敢えて名乗るならば我は葉月九香!その小さな頭蓋に刻み込め!!」

 

ヒトの拳と鬼の拳がぶつかった
夜だというのにその瞬間だけ昼間の様に輝いた気がした

 

九香「とまあ、そういう最悪の第一印象を経て妾と奏覇は今一緒に居るのじゃ」

 

母「我が息子ながらなんとも悪い方向に育った物だ」

 

奏覇「母ちゃんだってたまにBL妄想するだろ?アレと似た様なモンだよ!」

 

母「脳内で妄想するのと実際に行動に移すのは全然違うだろうが。警察呼ばれたら一発でアウトだぞ」

 

九香「うむ、今呼んでもギリギリセーフな気がするぞ」

 

奏覇「いや、俺幼女は対象外だから。全然これっぽっちも勃たねえし」

 

母「その発言も色々と危ないぞ」

終わり

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