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その日は暑かった

 

紅葉「ああ、離れに居たのか。おい奏覇起きろ」

 

ゲシッと母ちゃんの右足が俺の脇腹に突き刺さる

 

奏覇「ぐへっ・・・なんだよ、人が気持ち良く寝てるってのに・・・」

 

紅葉「突発問題。死ぬと炎の中から蘇る鳥の名を答えよ」

 

奏覇「巴か。俺の、怠惰な、ひと時が・・・」

 

その日は暑かった
40度を超えていた。鉄板の上に乗った肉の気持ちだった

 

【OctuplePhoenix】

 

奏覇「お前、来るなら来るって連絡しろよ」

 

家の横にある林道の入り口で口にアイスをくわえながら目の前の少女に愚痴る

 

少女「なんで今更アンタにそんな気を遣わなくちゃいけないのよ」

 

奏覇「こっちにも色々準備があるんだよ。九香はお前の事知ってるだろうが、リコに至っては今日が初対面だしな」

 

九香「うむ、先程からリコが頭に?マークを浮かべておる。暑さの所為もあるし手っ取り早く自己紹介を頼むぞ」

 

巴「あー、それはゴメン。はじめまして・・・だよね。私の名前は八束巴、簡単に言えばコイツの親戚ってトコかな」

 

リコ「な、成程。り、リコリス=ヴァーンナブルです!魔界リヒトの王子です、よろしくお願いします!!」

 

なにやらテンパリ気味にリコが律儀に返す
その自己紹介に違和感を覚えたのか、率直に疑問を問う

 

巴「王子?私と同じ女の子にしか見えないけど?」

 

九香「そやつの言っておる事は事実だ。女性ホルモンの分泌、女性器や発達した乳房などの身体的特徴、果ては性染色体に至るまで女のソレと相違無い」

 

奏覇「かーっ、マジか?!何ぼなんでも体の中までは見れねえからなー、多分お前の言ってる事は真実なんだろうな」

 

九香「いやだから言っておるじゃろうが。貴様とは人としての出来が違うのじゃと」

 

奏覇「その割には胸に栄養いってねえけどな」

 

紅葉「確かに」

 

九香「ええい、大きなお世話じゃ!紅葉はともかく貴様にだけは言われとうない!!」

 

巴「まあ、奏覇は幼女対象外だもんね。でも紅葉さんって私から見ても結構デカいよ?」

 

着物とサラシで締め付けられているので一見そうとは思えないが、女性メンバーの中でかなりの大きさである
本人は見せる相手も居ないと漏らしている様だが・・・

 

九香「紅葉はいいんじゃ、バストアップの為の揉み方指南をしてくれるからの」

 

巴「マジか!?」

 

紅葉「まあ、私も若い頃に色々あったからな」

 

言って遠い目をするのは何故なのか
そしてちょっぴり笑い声が乾いているのはどういう意味なのだろうか

 

​終わり

 

 

巴「む・・・ちょっと奏覇、そこほつれてるわよ」

 

奏覇「あ?・・・・・・ああ、どっかに引っ掛けたんだな」

 

巴「貸しなさい、縫ったげるから」

 

奏覇「ほい」

 

上着を渡す
巴はそれを受け取ると右手に装着した手甲に内蔵された糸と針を取り出す
チクチクチクと縫うスピードは最早女子高生のソレではない
熟練の裁縫職人の如き速さでほつれた部分が元の姿に戻った

 

紅葉「いつ見ても巴の裁縫技術は凄いな。まるで昔の知り合いを見ている様だ」

 

巴「紅葉さんだって出来るでしょうに」

 

紅葉「いやいや、私のは人並みレベルだよ。巴やあの人みたいな技術は持ち合わせていない」

 

奏覇「母ちゃんは剣と小説だけが神レベルだからな」

 

紅葉「うむ、剣は剣士として当然だが、小説に関してはどれも渾身の作であると自負しているぞ!」

 

奏覇「中身は全部BLだけどな」

 

何回か見掛けた事がある
何をって?
母ちゃんの作品がゲームやらアニメやらになってる所を
結構ファン多いんだけど顔出ししてないから、作者が一児の母だなんて誰も知らない

 

紅葉「誰も知らない、知られちゃいけないというやつだ。まあ、そんな制限は設けてないがな」

 

巴「BLってアレよね、男の人同士があんな事やこんな事するやつ」

 

紅葉「興味あるなら資料の一つを貸すが?何がいい?」

 

奏覇「おいそこの貴腐人、人の女に何を吹き込もうとしてやがる」

 

紅葉「何を言う、私は既に汚超腐人の域に達しているといっても過言では無いぞ」

 

リコ「さっきから全然話に入り込めない・・・」

 

九香「大昔には衆道っちゅうのが流行っとったんじゃし、別におかしな事でもあるまいて」

 

リコ「え」

 

終わり

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