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その日はクリスマスだった
夜空に輝く星々の光を消すかの様に煌くネオン
広場の中央にそびえ立つ巨大なモミの木
先程から降り始めた雪は地面を覆い、行き交う人々の足跡を静かに残していく
幻想的と誰かが言うのは間違いではない
間違いではない、が
どの様な世界においても正常が必ずしも正しいとはいえない

 

【サンタ、襲来】

 

子供達がその日待ちわびる存在
白いヒゲを生やし、赤い服を纏い、トナカイの引くソリに跨りやって来る
サンタクロース
実在するとも民話の類とも御伽噺の存在ともいうソレが
この天神町にやって来た
・・・最悪の形で

 

蒼麻「特A級の次元犯罪者?葉月の他にも居たのか」

 

邪狼「ああ、ここ数年程で遭遇・目撃の証言が多発していてな。事態を重く見たDUO(次元統合組織)が各抑止力に要請を出した・・・という運びだ」

 

赤「子供しか狙わないとなると、一種の倒錯趣味が行き過ぎた奴。という訳でも無さそうだな」

 

秋「殺害するだけならまだしも形を留めないレベルの強姦行為、調理からの人肉食、裏世界への違法ルートによる臓器売買・・・目撃者の隠滅行為、等々。挙げたらキリが無いね」

 

蒼麻「なのにクラスが人間?おいおい、何の冗談だよ」

 

赤「体が肩口から真っ二つに裂けてる写真あるぞ。素手でここまで出来るとか人外かよ」

 

白帝「一部屋丸ごと血の海になっている写真もありますね。トマト祭でもここまで広範囲には飛び散りませんよ」

 

邪狼「断罪皇帝は年末の書き入れ時との事で辞退。魔桜・霊武は興味無しとの一点張り。天界は泥棒騒ぎでそれ所ではないとの事だ」

 

蒼麻「だからってウチにお鉢回すのやめようぜ。外寒いし」

 

秋「屋外では目撃証言無いけどね」

 

白帝「ところでコレなんて読むんです?」

 

白帝が件の犯罪者の書類に目を通しながら言う
ミミズののたくった様な赤い字で書いてあったからだ

 

白帝「下っ手くそな字ですね。自分では達筆だとでも思っているんでしょうけど」

 

秋「白帝、それダイイングメッセージ。被害者が死の間際に書いた物だから下手くそでも仕方無い」

 

白帝「ああ、成程。で、なんて名前なんですか?」

 

邪狼「サンタ」

 

白帝「え?」

 

邪狼「サンタクロースだ」

 

白帝「サンタクロースって、あのプレゼントをくれるあのサンタクロースですか?」

 

邪狼「そのサンタクロースだ」

 

白帝は只々「えぇ・・・」と困惑の表情を浮かべて写真を再び見た
なんでよりによってサンタなのか、と誰もが思った

 

続く

 


蒼麻「ここまでとは・・・想定を下に見積もり過ぎたか!」

 

全方面に散っていく壁や床の破片を避けながら愚痴る
膨大な書類から判明した特徴と超長距離からの無人偵察機による情報を照らし合わせた結果、サンタクロースはこの弐本に居る事が分かった
そしてそのサンタが人口密集地に近付くのを阻止する為に蒼麻達は迎撃を開始した

 

蒼麻「経崎とソロモン、速贄は左方から強襲、深追いはするな!リベルタと冥加岳は右方への退路を塞げ!霧咎、後方の第四部隊にこの先の森を囲めと伝えろ!!」

 

蒼麻率いる第八部隊は破壊に関しては極たるものだ
多対多において森を戦場とするのは得策ではないが、多対個であるならばこれ程有効なものは無い
隠密行動は簡単だがそれは逃げ道が確保出来ている場合である
針の抜け穴すらも無い閉塞的なフィールドではまさに袋の鼠。窮鼠猫を噛む事すらも難しいだろう

 

蒼麻「よし・・・サンタは予定通り森に侵入。第四部隊の配備は完了。後は第五部隊の処理を待てb」

 

その瞬間森が爆ぜた
大量の火の粉を舞わせながらナニカが空から凄いスピードで落ちて来た

 

蒼麻「も、妹紅!?・・・炎対決でお前が負けるだと?!」

 

妹紅「いや、森の奥まで追い込んだ所で突然爆発されて。突然の事すぎて対応が出来なかったのよ」

 

蒼麻「あの爆発はお前の炎が起因じゃなかったのか」

 

妹紅「爆発の直前に奴が懐から何かを出してたけど・・・・・・水銀に似ていた様な、記憶があるわ」

 

蒼麻「水銀単体じゃ他にもモノが要るが。いや待て、まさか霆酸水銀か?」

 

妹紅「何よそれ」

 

蒼麻「別名『雷霆汞(らいていこう)』とも呼ばれる起爆薬の一種だ。少しの加熱でも爆発し配合次第ではその威力をも調整出来る代物だ。この世界では既に忘れ去られた技術の筈なんだが」

 

この世界ではそうだった
あまりにも人の命を奪う可能性があった為、数億年前に製造・使用法を封印したのだ
だがそれをサンタは知っていた
その危険性を知った上で使ったのだとしたら、それは最早処理指定ではなく殲滅指定である

 

蒼麻「(あれは睦月が自ら禁忌指定に処した筈。その決定を覆す事等ありえない)」

 

自分の兄であり世界の空蝉である睦月が世界に仇なす様な事をする訳が無い
まさに愚か、阿呆をも超える愚劣さ
だが睦月でないとすると他の兄妹か?
否、それこそありえない
役割が決まっている自分達はそれ以上の役割を行使してはいけない
ならば、答えは自ずと一つに絞られる

 

蒼麻「・・・かの世界から流れて来たのか」

 

いつか渡った世界
辿って来た歴史はほぼ同じで、自分と同じ顔をした人外が居る世界
過程が同じという事は、つまり生まれる物も同じという事だ
名称が同じとは限らないが確実に霆酸水銀は存在するだろう
それにこれは推測だが、恐らくあのサンタもかの世界から流れて来た存在
そんな絵空事の様な推論に達したのには一つ理由がある
自分達がサンタを発見した時、被害報告を受けていないにも拘らず既にサンタの体には返り血が付いていた
しかしこの辺一帯に村はおろか動物一匹すら棲息してはいないのだ
故に、自分達が相対しているサンタに返り血が付いているのは物理的におかしいのだ

 

蒼麻「立てるか?」

 

妹紅「問題無いわ。幸い地面は雪に覆われてるし、傷はとっくの昔に塞がった」

 

藤原妹紅は不死者である
決して死なないし、死んでも何事も無かった様に再生する
聞いた話ではオリジナルの世界から来たらしく、本部に居る蓬莱山輝夜も同種との事だ
五、六周期前だったかにそんな薬が奉納されたとかいう昔話を聞いたが恐らくソレの事なのだろう

 

妹紅「他の奴ら無事かな。殺しても死なないのばっかりだけど、結構体力削がれちゃうし不意を突かれ易いんだよね」

 

蒼麻「恐らく問題無いだろう」

 

妹紅「なんでそんなハッキリ言えるのよ?」

 

蒼麻「サンタはもう既にこの世界に居ないからだ」

 

あちらの世界から来たというのであれば、いつかの自分の様に時間制限がある筈
・・・自分だけに発生した事例でない事を祈るが

 

続く

 


蒼麻「ぬおわああああ!!!!!!」

 

間一髪避ける事が出来た
突然姿が消えたので逃げたかと思いきや、また突然現れた。今度は横方向から

 

蒼麻「あぶっ、あぶっ、ふぃー・・・・・・って、物理的におかしいだろ今の!」

 

赤「何処かの店先に立っていそうな人形の如くスライド移動してきたな」

 

軍曹は動かないけどな

 

白帝「というか、所々焦げていませんか?調理失敗というやつでしょうか」

 

秋「頼んで出て来たのがそれだったらクレーム確実だよ。アムリガなら訴訟待った無し」

 

赤「特A級の次元犯罪者だという話だしな、次元間移動を攻撃に組み込んでいるかもしれん」

 

蒼麻「なにその軸移動こわい」

 

白帝「なんとしてでも護身完成だけは阻止しなければいけませんね」

 

最近のブームは格ゲーであった
休日とか蒼麻の部屋に集まってゲーム大会である
ちなみに十割確定コンボは禁止。やったら過酷な罰ゲームを課される
海上フルマラソンとか永窮冠獄10時間耐久選手権とか
蒼麻を焔燼匣の中に30分閉じ込めて生き残るか灰になるかとか
道徳的に考えて物凄く酷い罰ゲームである

 

蒼麻「なんか納得いかねえんだよなあ」

 

サンタ「(´・ω・`)ゲンキダシテ」

 

蒼麻「なんで俺殲滅対象に同情されてんの・・・」

 

サンタ「(´・ω・`)ソウダッタ!」

 

サンタ「(´・ω・`)タベチャウゾ!!」

 

白帝「もしかして噂に尾ひれが付き過ぎただけで、本当は人畜無害なのでは?」

 

サンタ「(´・ω・`)ガオー!」

 

蒼麻「お、外見からは分からないが意外と可愛らしいじゃれつきk・・・めっちゃ肩食われとる」

 

サンタ「(´・ω・`)オトナダカラ,アンマリオイシクナイ…」

 

白帝「斬りましょう、それも今すぐにでも!」

 

サンタ「(´>ω<`)ウワー,ヒトゴロシー!」

 

白帝「どの口が言いやがりますか」

 

サンタ「(´・ω<`)ジャジャーン!コレガメニハイラヌカー!!」

 

サンタが懐より取り出しましたるはメタルカラーの液体がチャプチャプと音を立てる試験管
ホントは正式名称は試験管ではないんだろうけど、パッと見短い試験管にしか見えないアレである

 

蒼麻「試験管だな」

 

赤「いや、オレは中身が気になるが。色的に水銀か?」

 

秋「なんで水銀を見せ付けて勝った気になるのさ?」

 

白帝「金剛錬銀を溶かした物とかですかね?」

 

蒼麻「金剛錬銀はメタルブルーだけどな」

 

赤「まさかオリハル・・・いや、アレはメタルレッドか」

 

サンタ「(´・ω・`)ノ[カクサンスイギーン!」

 

秋「か・・・赫酸水銀!?」

 

白帝「確か爆炎汞の製造法の書かれた書物が外神界から盗まれたという話があった様な」

 

サンタ「(´・ω<`)テヘー,バレチッター」

 

と言いながらぽーいと試験管を投げるサンタ
その行動に脊椎反射で反応してしまう赤

 

赤「硫酸系なら喰らう前に焼き尽くす。紅絶炎熱」

 

秋「駄目だ!赫酸水銀は少しの加熱でも起爆するんだ!!」

 

赤「破、え゛?!」

 

ドッカーン
大体分かってた結末だった

 

蒼麻「こんな事で終わらいでか!」

 

土埃漂う視界のすこぶる悪くなった状況でも蒼麻は諦めない
別に土埃の中でも容易に敵を認識出来るとかそんな特殊能力を持ってなくても、蒼麻は意外となんとか戦えるのだ
本人は全くの無自覚だがそんな感じの素養は生まれた時から持ち合わせていたりする
創った神様もよく知らないブラックボックスめいた物なのだが

 

サンタ「(´・ω・`)キミハ…マサカ…」

 

蒼麻「混沌!193番射出!!」

 

蒼麻の呼び掛けに応じて後方の空間が音も無く裂けると、中から光り輝く剣が飛び出した
サンタは突然の奇襲に対応出来ずモロに剣を身に受けてしまう

 

蒼麻「続けて56番、230番、847番射出!」

 

サンタ「(´;ω;`)グフッ…」

 

よく見れば聖剣もあったし大業物も魔刀もあった
剣はそのまま突き刺さったし、刀は律儀に回転していた
剣と刀ではキチンと用法を守らねばご自慢の殺傷性を殺してしまうのである

 

蒼麻「一斉返還!・・・かーらーのー、千屠豪閃掌(仮)ーっ!!」

 

思いっ切り右の拳でブン殴った
渾身の力で殴られたサンタの顔面は骨という骨を砕かれ、原理不明の謎回転をしながら遥か500m先まで吹っ飛んだ
最早瀕死を通り過ぎて虫の息寸前のサンタは最後に一言残して永遠の眠りに身を預けるのであった

 

サンタ「(´・ω-`)アムオ…ス」

 

蒼麻「んだそりゃ。俺の名は如月蒼麻だ、地獄で100字書き取りして覚えろ!」

 

赤「ゲホ・・・いつの間にか終わってやがる」

 

秋「酷い目に遭った」

 

白帝「最後に何か言っていませんでしたか?確か・・・アムオむぐっ!?」

 

白帝が息苦しそうにしている

 

秋「あ、検閲に引っ掛かった」

 

蒼麻「うわ久し振りに見た」

 

赤「昔は多かったよな。軽口から死ぬ奴」

 

白帝「はー、はー、数世紀ぶりに死ぬかと思いました」

 

いい加減ネタが無くなったので終わる

 

「サンタ地獄」

 


うにょーん、蒼麻です
久し振りにクリスマス小説です
これで大晦日はやらなくても・・・え、ダメ?
オーケー、じゃあ補足説明のコーナーやります
今回登場したサンタは資料通りに色々とやらかしてる特A級の犯罪者さんです
外見の説明をしてないのでサンタの一般的なイメージからヒゲの生えたお爺さんを連想した事でしょう
残念、女の子でしたー!♪
蒼麻達が容赦無かったのは男にしか見えない体格が原因なんですが、それ全部変装用なので肉襦袢とか付けヒゲです
次元犯罪者というものはクラス『漂泊者』に該当するんですが、この漂泊者は女性しか居ないんですね
だもんで今回のサンタは女の子でした。白槌の例もありますから名は体を表さないし、体は性を表しません
次の補足説明ですが、193番と56番と230番と847番の正体ですね
最初に飛び出したのは光り輝く剣。つまりクラウ・ソラスです
ブログ版の蒼麻は30年前に、動画版の蒼麻は3ヶ月前に経験した対国家戦争で光学兵器の核にされていた神器です
早い話が持って帰って来た訳ですね。流石刀剣マニアだね
次に飛び出したのは聖剣アイオーン、続いて穿喰刀・千鬼、最後に魔刀イスルギ
聖剣アイオーンは外史・外伝「真理殲滅編」においての滅理魔装具『八想天地』の一振りです
正史においてはそもそも真理が出現してないので蒼麻のコレクションの一つとなってます
穿喰刀・千鬼は山篭りをしに行った白帝が謎の老人から譲り受けた物です
その昔京の都に現れた千匹の鬼を屠ったという伝説を持つ刀です
魔刀イスルギは2009年の暮れに起こった蒼黒神社テロ襲撃事件でガリョウを操っていた刀です
現在は浄化中で自我は消滅していますが呪い成分がしっかり残ってる状態です
これが年月を経る毎に呪い成分が抜けていって、綺麗サッパリ無くなりそこから更に1万年程経過したのが東邦となります
ウチの世界は何処かで必ず繋がってますので、あれも元を正せば天星世界です。そして壁一枚向こう側にあるのが動画版の世界
こんな重要な設定をこんなトコで書いていいんだろうか?
と、自問自答をしそうになりましたが別に如何って事無いですね
いつもの事ですから(・ω・)φ

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